理学療法士の多様化する働き方を実現するキャリアマガジン「コメット」

2022.03.21 臨床

脳卒中の祖母、その姿をみて志したリハビリの専門家

#理学療法士#病院

桑原寛哉(ジェネラリスト)

脳卒中を患った祖母の姿をみて志した理学療法士への道。
資格取得後、急性期~回復期、訪問リハビリなどにて臨床経験を積む。
病気や障害、年齢・・・患者によって抱える内容もさまざま・・・
幅広い患者に対応できるジェネラリストを目指す!!
桑原 寛哉(クワハラ ヒロヤ)

社会医療法人社団 正志会 南町田病院

資格:
理学療法士

脳卒中を患った祖母の姿をみて志したリハビリの専門家

桑原さんが、理学療法士になった経緯を教えて下さい。

自分自身がリハビリを学ぶことで、祖母のように障害を抱えた方々を治療したいと思ったからです。

以前、僕の祖母が脳卒中になり、麻痺や構音障害などの後遺症を患ったんですね。住まいが北海道のやや過疎化した街だったために医療体制も乏しかったんです。なので、十分なリハビリを受けられず、回復しきれないままの状態で予後を過ごすことになりました。なので、自分自身がリハビリを学ぶことで、祖母のように障害を抱えた方々を治療したいと思って、理学療法士を志しました。

北海道出身とのことですが、どちらの学校に進学されたのですか?

山梨県上野原市にある帝京科学大学です。

医療に興味をもって入学したのですが、周りは体育会系ばかりでビックリしました!!

たしかに理学療法士には運動好きな人が多いかもしれませんね。勉強の方はどうでしたか?

祖母の病態をモデルにし、何をすべきだったかを考えながら勉強していました。

でも、勉強はあくまで勉強にすぎず、臨床に出たら机上の空論など覆されることばかりでした。

臨床では理論を超えたことが起きる!?

患者さんのリハビリをしていて、論理を超越したことがあるのですね?

勿論、あります!!

いろんな方々がいましたが、坊主頭で入れ墨だらけの脳卒中患者様を担当した経験が印象に残っています。
担当になったときは自分が学校や実習、臨床で培ってきた概念など大きく崩されました。 

坊主頭で入れ墨だらけですかっ!?

はい。更には強面の大男でした。笑

初回のアセスメントは別のセラピストがやってくれたんですけど、その人から「桑原さんの次に担当する患者さんなんだけど、坊主頭で入れ墨だらけの大男でしたよ!!」との申し送りがありました。
カルテには、被殻出血後の運動機能障害と構音障害と記載されていましたが、そこにはない情報をきいてかなり臆しました。




リハビリの主体性は誰に置くべき?

実際にその方のリハビリを担当してみてどうでしたか?

介入直後は、コワい見た目に加えて好戦的な態度があった気がしたので、それまでに味わったことのない緊張感がありました。

被殻出血の後遺症として片麻痺残存、上下肢ともブルンストロームⅡ~Ⅲのあいだで、構音障害は、ごく軽度でした。
下肢の筋緊張亢進し、足関節の背屈制限がありましたので、歩行時に爪先のひっかかりも多かったんです。なので、当然のながれのように短下肢装具の作製をお薦めしました・・・が、断られてしまったんです。

装具を拒否?それは、なぜですか?

エアジョーダンのシューズが履けなくなるからです!と笑

既製品の装具は試みましたが、「いらない!」と一蹴されました。
彼の退院後の目標は「ナイキのスニーカーを履いて、元気に歩き回ること。」なんです。

装具があれば足関節を背屈位に固定できますし、下腿三頭筋の短縮も防ぐことができます。
でも、大好きなスニーカーを履けなくなったら「歩けなくではなく、歩かなくなってしまう」かもしれません。
そうなると、装具を装着するかどうか以前に活動量が低下して、足関節の制動性もどんどん悪くなってしまいます。

動作レベルやADLが上がればQOLも向上するのではなく、QOL向上のために各機能レベルを底上げする意欲も上がってくる訳です。
患者さんの回復過程は、必ずしもクリニカルパスで決まっているのではなくセラピストが押し付けるものでもありません。
答えは患者さん自身がもっていることを改めて気付かされました。

驚異的な回復力とリハビリにより復活を遂げたbay4k氏登場!!

こで今回は、実際にその患者さんに登場してもらいました!!
ラッパーグループ「SCARS」とHIPHOPユニット「練マザファッカー」のMCとして活動してきたbay4kさんです。

2019年4月2日に脳出血で倒れ、急性期は大和市立病院、回復期を南町田病院にて治療しました。
発症直後はほとんど動けない状態でICUに搬送され、ラッパーの生命線である「声」が出しづらい障害が残ったbay4kさんは、桑原さんをはじめとした医療従事者に支えられたとのことです。

bay4kは、桑原さんとリハビリをはじめるにあたりどのような思いでしたか?

こんな若いヤツに俺の身体を預けて大丈夫なのかよって思いましたね!!

こっちは今後の人生かかってるんだよって。でも、他のセラピストと連携しながら、熱心にやってくれましたよ!

その人自身がどうなりたいのか?ということを徹底的に考えました。

bay4kさんだけに限ったことではありませんが、その人自身がどうなりたいのか?そのために、リハビリでは何をすべきかということを徹底的に考えました。
このこともbay4kさんとの関わりの中で改めて学ばされました。

訓練の必要性を理解していないのに取り組める訳もないじゃないですか。

リハビリの前に色々と訓練でやらせることを考えてきてるんだろうけど、痛みや状態によってはリハビリやりたくないときだってあるし、  訓練の必要性を理解していないのに取り組める訳もないじゃないですか。

主体性を置くべきなのはあくまでも患者さんなんですよね。

セラピスト主体でプログラムを決めてしまいがちでしたが、主体性を置くべきなのはあくまでも患者さんなんですよね。貴重な学びでした。理論は覆されるものであり、学びや成長に終わりはないのだと思いました。

リハビリの世界の未来を担う桑原さんが描くビジョン

桑原さんの今後の展望を教えていただけますか?

年齢・症例を問わず幅広く対応できる理学療法士を目指したいです!

現在、急性期~回復期、訪問リハ、住宅改修アドバイザーなど幅広く診させてもらっています。その中には、脳卒中や整形外科、神経難病などとさまざまな病気や障害を負った方々がいます。年齢層は高齢者が多いのですが、若年層や小児もいます。なので、なにか一つに特化するというよりは幅広く対応できるセラピストの必要性を感じています。なので、僕が目指すのは、スペシャリストでなくジェネラリストと呼ばれる理学療法士です。

走ることができるまでに回復したbay4k氏
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